くりっくと愉快な仲間達

 

 

 

 

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「ちょっと!!」

視界にはいってきたのは

ぼやけた赤茶色。

あの例の女の子だった。

あれ?

ここは?

安心を感じた、

と思ったのと同時にヤバイと思った。

コレ完全居眠りだ。うん。

「ハハハ、春の日差しに誘惑されて寝たな。」

そう山之内は言った。

は?

だいぶイラっときた。

なにコイツ。

前の女の子は

少し

同情するように笑った。

あんなにムカついてたのに

なぜか救われたような気持ちになった。

 

 

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まあいいや。

どうせ一年間担任なだけだろ。

興味は持たなかった。

 

そんな熱血教師は

自己紹介を始めた。

「山之内 啓祐です!

ヨロシクな!」

そう言って、

「じゃあこの列から自己紹介な、よろしく」

とつけたした。

 

俺は自己紹介も大嫌いである。

皆、名前と一言何か言ってお辞儀をする。

 

それよりこの席はいい位置だ。

春のうららかな日差しが差し込んで

とても心地よい。

彼の冷え切った心までも

ゆっくり

じわじわと

溶かしていくように暖かかった。

くりっくは頭の中で

バターを想像した。

バターは溶けて

一面が黄色になった。

だが

真っ黄色だった地面が

黒味を帯び始める。

気づけば彼は一人暗闇の中だった。

たった一人、ぽつんと立っていた。

 

ここはどこだ?

俺の居場所は?

彼は必死で探そうとする。

だが彼の足は

1mmすら動かなかった・・・。

怖かった。

この暗闇が。

未知の世界が。

動きたくないのだ。

何かに当たることを恐れて。

足を踏み外すことが怖くて。

どこにも戻れなくなることが怖くて。

そのとき彼は

低いうなり声のような地響きと

強い揺れを感じる。

それでも足は動かない。

しゃがむことさえできなかった。

 

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興味をもったとはいえ、ほんの少しだけだった。

もちろん腹は立っていた。

だがそれこそほんの少しで

すぐに冷静になった。

あの子は、おもしろい。

どんな頭のつくりになっているのだ?

興味本位だが、

友達になりたい

そう思ったのである。

そんなことを考えていると

 

「ホラ座れよーっ」

という威勢のよい声がして

勢いよくドアが開いて

くりっくは少し飛び上がった。

そんなに勢いよくあけることないだろうに・・

そう思いながら

少し腰を曲げながら

はいってきた大柄な先生をみた。

180cmはあるとみた。

熱血教師にみえるが・・・。

 

くりっくは熱血教師が好きではなかった。

 

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ほんと何なのコイツら・・

 

俺はそう心の中で呟いた、

つもりだったが本当に呟いていたらしい。

呟いたとたん、

また長い髪を揺らして女の子がこっちを睨む。

「そっちこそなんなのよっ!!」

俺たちは睨みあう。

だがそれは一瞬のことで、

 

「ちょっとやめてよ二人とも!馬鹿なこと言い合ってるんじゃないわよっ」

 

という声に飛び上がって

みゆうをみた。

みゆうはみるみる赤くなった。

「はあい。いきましょ」長髪の女の子はふてくされた顔でそう言うと、

みゆうの腕をつかみ、言ってしまった。

俺は少し動揺した気持ちをおさえて

静かに座る。

 

最悪だ。

どうせ今年だって変わらないと高をくくりながらも

心のどこかで変えたい、

と思っていたのに。

これじゃあ変わらないどころか

悪くなってるじゃないか。

あの女の子だって

まだこっちを睨んでいる。

まあいいや。

あの二人に嫌われたからって

何も変わりはしないだろう。

さっきだって

どうみてもあの子が悪い!

悪印象なのはあの子だろ。

そう自分を励まして

ぼんやりと彼女らをみつめていた。

 

何だか冷たいような考えだが

そうでもなかった。

彼にしてはめずらしく、

他人に興味をもった方である。

 

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何なんだこいつ。

俺そもそも何もしてねえし。

見てきたのそっちだし・・・。

「みゆうも言ってるわよ!!ねえ!?」

彼女はそういって

嫌がる友人の服のすそを引っ張る。

「ちょっとやめてよ・・・あたし別に・・・」

みゆうが小さい声で答えた。

大人しそうな子だった。

「さっき言ってたじゃない。」

「私はただ・・・」

困惑した顔でそう答える。

おいおいこんな子が何もいうわけねーだろ、コラ

「何であの人みてくるのかなあ・・・って。」

ややや

 

君の隣のやつのせいだよ!!??

 

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理解できなかった。

何この状況。

こんなの生まれて初めてだよ。

と、とりあえず起きよう。

俺は座り、立ち上がった。

そして机と椅子を起こした。

「無視してんじゃないわよおおおっ!

俺の腹に

すごいスピードで彼女の小さい足が食い込んだ。

 

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何かが違っていた。

 

俺は生きてる。

 

俺は目をそっとあけた。

 

俺の真新しい机と

 

椅子と

 

愕然としたクラスメートたちが

 

視界にはいった。

 

俺は床に倒れていた。

 

俺は後頭部に痛みを感じた。

 

「このドヘンタイ!」

 

あのキレイな女の子が俺に向かって叫んでいた。

 

 

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声をかけるか迷った。

「あの・・・・!?」

そのとき。

すごい破裂音みたいな音が響いた。

俺は一瞬、ガス爆発でもおこったのかと思った。

さらに俺の頬に何かが当たった。

「痛っ・・・・!?」

すごい衝撃だった。

俺、死んだの・・・?

もうオワリか・・・・

結局何もなかったな俺の人生。

 

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そんなことを寝不足の頭で考えながら

階段を昇りきり、すぐ手前の教室に入る。

彼が入ると、みんな少し

たじろいだようにこっちを向いた。

大方賭けでもしていたのだろうと

彼はそう予想した。

賭けというのは

くりっくが今日来るか来ないか。

現に

苦い顔をした男子生徒は

サイフをとりだし

こっちを少し睨んだ。

くりっくは足を止めずに

黒板の前まで行き、

磁石ではられた座席表をみて

自分の席を探した。

ああ、あった。

窓側の席で前から3つめである。

彼は机と机のあいだを

早足で通って

席に着いた。

そしてかばんを机の上におろした。

暖かい春の日差しが

彼のかばんの上に注ぎ込んだ。

なかなかいい席だと思う。

満足して座っていると

前の席に座って友達と話していた女の子が

彼をちらりとみた。

と思うと視線を戻し、

また話し出した。

なかなかきれいな子である。

顔が整っていて、凛とした感じであった。

何よりも

目立つきれいな髪を持っていたのだ。

赤がかかっている感じで

紅茶のようで(?)

さらりとした髪が腰までのびていた。

少し観察すると

彼は目をそらした。

あのきれいな髪の女の子は

視界の隅にはいった。

だが

どうも彼女はさっきから

俺をちらちらと見てくる気がする。

 

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去年と同じ春だった。去年と同じ桜が歩道を彩る。

去年と同じ制服で、去年と同じ道を通る。

去年と同じような日々が続くんだろうな、

と思いながら俺は歩いていく。

 

山中高校二年生。それが彼、くりっくの肩書きである。

この高校は岡山県の中の、何もない田舎にある高校である。

たくさんいた同級生達は

つまらないと言い、多くの人が出て行った。

だがくりっくには田舎だろうと都会だろうとつまらなくても

どうでもよかった。

進路だって、夢なんかなかった。

幼いころからひどく貧しかった家で育ってきた彼は

働いて働いて働いて

それでも余裕なんかなくて

必死で働いて

倒れる暇もないような

そんな両親をずっと見てきた。

彼も高校に通いながら

アルバイトをしていた。

だから彼は

高校をでたときのことなんか

考えてる余裕もなかった。

 

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